能がユネスコの世界無形遺産に指定されたのを受けて、大阪府舞台芸術振興事業として、特別公演が催されました。
大槻能楽堂はMAX500人のところ、立ち見が出るほどの盛況で、休憩を挟んで5時間みっちり楽しませてもらいました。
今回、能は金剛流と観世流、狂言は大蔵流でした。出し物は、「邯鄲」「松浦佐用姫」「蚊相撲」「恋重荷」の4演目です。簡単なストーリー紹介しておきます。
・能「邯鄲(かんたん)」:金剛流
中国の青年が楚国の高僧に教えを乞いに行く途中、邯鄲の宿に泊まりました。宿の亭主は不思議な枕を持っていて、この枕で寝ると瞬時に悟りが開けるというのです。食事の支度を待つ間、一寝入りを薦められ、少し昼寝をすることにしました。
横になるやいなや、帝の勅使が現れ、彼に帝が位を譲ることにしたというのです。戸惑いながら青年は輿に乗って宮殿に行き、王位に就きました。それから50年、彼は千年の寿命を保つという仙家の酒を飲み、長寿を祝う祝宴を開き、栄耀栄華を尽くします。と・・・宿の亭主に「食事できました」と起こされ、すべては夢だったと知ります。
青年は王位の栄華も人生そのものも夢だと悟りを得、枕に感謝して帰っていきました。
(眠りから覚め、我にかえった青年の呆然とした姿。重々しい声。派手な舞から一転して代わる場面転換が、背景に頼らない能らしい。)
・能「松浦佐用姫(まつらさよひめ)」:観世流
西国修行の僧が九州肥前の松浦にやってきました。景色を眺めていると海女がやってきたので、名所をたずねると、狭手彦(さでひこ)と佐用姫のことなどを語り、僧から袈裟を受け取ると、自分は佐用姫の霊だといって消えます。
僧が里人からいわれを聞いたあと、夜になって水面から狭手彦の形見の鏡を握り締めた佐用姫が現れます。そして、ことの顛末を語ると消えていきました。松浦の豪族の娘佐用姫と遣唐使の狭手彦は、一時の仲のつもりが本気になってしまいます。彼が遣唐使として中国に立ったあと、彼女は別れを悲しみ、去りゆく船に向かって領巾を振り続け、耐え切れずに小船を操り後を追います。彼を乗せた船が見えなくなってしまうと、悲しみのあまり形見の鏡とともに海に身を投げてしまったのでした。
(今の時代なら、中国まで飛行機でひとっとび。遣唐使の時代は、行ったら帰って来れる確率は低い。しかも、彼は都人。九州の港で待つ恋人の元に戻る確率は皆無に近かったのでしょう。)
・狂言「蚊相撲(かずもう)」:大蔵流
ある大名が相撲取りを新たに召抱えることにし、太郎冠者に探してくるように命じます。近江の守山に住む蚊の精霊は、人の血を吸う為に人間に姿を替え、街中にやってきました。
太郎冠者は蚊の精とは知らずに、その男を館に連れて帰ってきます。大名に報告するとさっそく相撲を取る事になりました。相手がいないので、大名が相手をしました。蚊の精は喜んで、大名の血を思い切り吸い、大名は貧血を起こします。おかしいと思った大名は、太郎冠者と一計を案じ、人間大の蚊が2度と血を吸えない様にしてしまいました。
(相撲を取る段になると蚊が本性を現し、お面にストロー状のくちばしを付けて、血を吸う直前まで袖で隠し、いきなりウガッと刺すところは面白い。蚊の精なら風に弱い、だって?くちばしをもぎ取られた蚊が、それでも襲おうと大名や太郎冠者をぶんぶんいいながら追いかけていくところは、どたばた喜劇です。)
・能「恋重荷(こいのおもに)」:観世流
宮中で庭の菊の世話をする老人が、ちらっと見かけただけの女御に惚れてしまいました。その噂を聞いた女御は、彼女が準備した非常に美しく軽そうに見える恋の重荷という荷物を持って、老人が庭を廻って見せたならば彼の前に姿を現しましょう、と伝えました。
老人は一目でいいから彼女を見たい、と思ってた願いが叶うと思い、なんとか持ち上げようとしますが、びくとも荷物は動きません。彼女が自分をからかったと知り、彼は女御を恨みながら死んでしまいます。
廷臣は老人の祟りを恐れ、女御に庭に出るよう勧めます。彼女が庭に姿を現すと、老人の怨霊が現れ、女御の仕打ちを責めます。しかし、やがて怨念は消え失せ、老人は女御の守り神となると言い残して去っていきました。
(怨霊を前に臆するところ無く対峙する女御。彼女の姿が、彼女を敬愛して一目見るだけで良いからと願っていた老人の怨念を消し、守り神になると言わせたのだろうか。それにしても、死ぬ前にもうちっとやりようがあろうものを・・・これってハッピーエンド?)
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